第36回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会
大会長 依田 哲也
東京医科歯科大学 顎顔面外科学分野 教授
この度、第36回総会・学術大会の大会長を務めさせていただきます。皆様に感謝し、ここに謹んでご挨拶申し上げます。
今回の大会テーマは「顎関節サイコウ(再考、再興、最高!!);みんな集まれ!」としました。ざっくばらんでややくだけた感のあるテーマですが、ここに本大会に対する思いが込められています。過去の大会を振り返りますと、多い時には200題を超す一般演題が発表され、特に若い会員が躍動しておりました。しかしながら近年は100題を下回り、しかも会員の高齢化が進んでいます。今大会は、皆様のご協力で昨年を上回る演題をご応募いただきましたが、それでも往時の勢いには至りませんでした。要因は種々あると思います。例えば顎関節症がself-limited diseaseであることが強調されすぎると、積極的な治療が必要ないように思われるかもしれませんし、また、咬合・顎運動との関連、顎関節そのものの病態等が軽視されることで、若い歯科医療関係者の関心が薄れているのかもしれません。
顎関節症を始めとする顎関節・咀嚼筋疾患を改めて「再考」する必要があると思います。それによって、本学会を「再興」し、「最高」に面白い研究、診療、学会にしようではありませんか。今回の大会では、シンポジウムとして、「1,顎関節円板の復位・整位を再考する」、「2,習慣性顎関節脱臼を再考する」、「3,顎関節症と咬合を再考する」、「4,咀嚼筋腱・腱膜過形成症を再考する」、イブニングシンポジウムとして「DC/TMDを再考する」を企画しました。また、臨床医の会による歯科衛生士向けの顎関節症病態別治療法のシンポジウムを日本歯科衛生士会との共催で行います。一般演題は基本的に全てポスターとしますが、シンポジウム1~4に関連した一般演題は口演とし、シンポジウムのセッションに含めて発表してもらうことにしました。特別講演は、動物の捕食と顎関節構造に関した話を「咀嚼機構の進化学的多様性」と題して、TVでもおなじみの東京大学の遠藤秀紀教授にお願いしました。その他にも、教育講演としてのランチョンセミナー、顎関節外科研究会、若手部会セミナー、ハンズオンセミナー、指導医講習会も楽しみにして下さい。
ところで、シンポジウムの語源をご存知でしょうか。古代ギリシャ語で一緒に酒を飲むという意味のsympineinから派生したsymposionといわれています。大会のポスターには、その壁画を使用させていただきました。つまり、酒杯を片手に議論を交わすというものです。イブニングシンポジウムは古代ギリシャ方式で行う予定です。そしてシンポジウム終了後は、その会場をそのままcharge-freeの懇親会会場にして、対面での開催の喜びを謳歌したいと思います。
Covid-19感染のおかげで、Web開催による参加者の負担軽減、合理性等に気づいてしまいました。今後も講演会や学会でWeb開催は活用され続けるとは思います。一方で、味気無さ、寂しさを感じ、対面でなければ得られない重要性を認識したことも事実です。いつの世も人とのつながりがあってこそです。共通の研究志向の仲間が一堂に会して議論することの大切さを改めてかみしめたいと思います。
「みんな集まれ!」